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2019-10-14

【塩尻あたり】泣けるほどフレッシュ!高校生が醸造する本格ワインとは?「塩尻志学館高校」

塩尻からこんにちは。ライターのイナバです。

五一ワイン(林農園)で貴重なお話を伺ったあと、日本一狭いことで有名な駅そばでお腹を満たし(美味しすぎてあげみざわ)、向かった先は塩尻志学館高校。

ここは、生徒がワインを醸造!?しているという全国でもかなり珍しい高校なのです。

 

高校ですが醸造免許、持ってます

ワイン用ブドウの名産地、桔梗ヶ原に位置する塩尻志学館高校は、普通科と専門学科を統合した「総合学科」長野県下で初めて開設。約700名の生徒が在籍しています。

ワイン製造をはじめ幅広〜い選択科目が用意され、2年次からは進路や適性・興味に合わせて、自分で時間割を作成するそう。これ、うらやましい〜

そんな同校に、果実酒類の醸造免許が交付されたのは、前身である農学校時代の1943(昭和18)年。ちなみに、ブランデーの製造免許も持ってます。

もともとは1911(明治44)年に「東筑摩郡南部乙種農学校」として開校。1世紀以上に渡る伝統と歴史を受け継いでいます

黒板ってなんかいいですよね〜

現在は、総合学科食品科学系コースの生徒約40名がブドウの栽培から醸造までを一貫して手掛けています。

また、3年生を対象に、毎年海外ワイン研修も実施。今年は、校内審査を通過した6名がアメリカ・カリフォルニアとサンフランシスコへ行ったそう! さすが塩尻、ワインに対する熱の入れようが違います。

同校で作られている「KIKYOワイン」は、赤・白・ロゼの3種類。しかも、国産ワインコンクールで銅賞を受賞した実力派! 色調や香り、味、バランスなどの厳しい審査が課せられる長野県原産地呼称管理制度認定ワインにも選ばれているそうですよ。

ワイン大国、長野県のお墨付き&市場には出回らない超貴重なKIKYOワイン。でも、飲めるチャンスがあるんです! それは後ほど….

でも、未成年なので醸造の過程とはいえもちろん試飲はNO! 

どのように作っているのでしょうか??

学校内に農場があった!

ということで、3年生の西口茉莉花さん(奥)、小石ふみさん(手前)に案内していただきました。まずは校内のブドウ畑へGO!

2人とも海外ワイン研修参加者。カリフォルニアワインの代表的産地・ナパをはじめ各地のワイナリーを巡ってきたそう。なんか2人が眩しすぎて(遠い目)

垣根仕立て700㎡、棚仕立て2600㎡の圃場では、メルローをはじめコンコードやカベルネ・ソーヴィニョン、マスカット・ベリーA、ナイアガラ、シャルドネを栽培。

9月末の収穫を目前に控え、芽の脇から出てくる枝を間引く作業をしています。整えることで、日当たりや風通しを良くし、湿度の上昇も抑えられるそう。冬は、降り積もる雪のなか剪定作業を行っているそうですよ。

3年生は一人あたり4本ほどを担当。もちろん「仕立て」から生徒が行う

「葉っぱや枝の状態を見ればサボっているかどうかすぐ分かっちゃいます(笑)」

たわわに実るブドウ様

すでに色は十分ついているので、あとは糖度の上がり待ち。水分量が多くなると糖度が下がるまたは上がらないため、お天気を見ながら収穫のタイミングを探っているそう。

ワインを作ってみたくて関西から来た

そもそも2人はなぜ、ワイン作りを選んだのでしょうか。

高校生の頃から、明確な目標ややりたいことがあるって素敵やん(何故か関西弁)。

なんと西口さん(右)は、ワインを作ってみたくて関西から引越してきた!

「地元のBOOKOFFで、長野県の情報誌『KURA』を見つけて。『ワイン醸造家になる』という見出しに惹かれたんです。『新しい面白いことがしたい!』と考えていた時だったから、思い切って入学を決めました」と、関西から引越してきたという西口茉莉花さん。

卒業後は醸造家かと思いきや、大学で国文学を学びたいそう。今も他の授業では、古典文学から各時代のお酒の飲み方を研究するなどされています。感心。

「山や自然に魅力を感じる」という小石ふみさんは、卒業後はさらに農業を学ぶべく大学へ進学予定。醸造前後の香りの変化に興味を持ち、今はブドウ以外でもイチゴやモモなどの果物で研究中。

意外にも(?)描いている未来は、醸造家へは直結していないんですね。

一つに捉われず好奇心が赴くままに選択して実行し、知識や経験をしっかり身につけていく姿に、イナバはすっかり感動。その先の広がりもまた無限大だなぁとしみじみしちゃいました。

自身の高校時代と重ね合わせた結果、やっぱり眩しすぎて再び遠い目

香りや化学分析をもとに味を調整

ブドウを収穫したらまずは冷蔵庫へ。

ブドウの糖度を測り、計算式から加えるべき砂糖の分量を導き出して、補糖していきます。

ちなみにナイアガラなら1000Kgで約700lのワインが作られます。これはなかなか贅沢な搾汁率だそうで、利益を目的としない高校生だからこそ作れるワインならではですよね。

庫内は3℃。さむ!

先生と和気あいあい

この「除梗破砕機」で茎を取り除き、ブドウの粒を潰していきます

種や果皮の渋みが出ないよう、パッと手で潰すくらいの強さで潰すことで、「高校生らしいフレッシュな味わいが楽しめるワイン」(先生談)になるのだそう。赤ワイン用ブドウは、果皮や種子ごとタンクへ。白ワイン用ブドウは除梗破砕後、圧搾機で搾汁します。

白は、冷却機能がついたサーマルタンクへ

赤はこちらのタンクへ。2190lも入る!

赤ワインは、この巨大しゃもじで毎日掻き混ぜる!

「酵母を入れるとアルコール発酵が始まるので、もう私達は口にできないんです。酵母を投入する際は、『入れるよ!』『いい?』『いいの?!』『きゃー』なんて言いながら、ワインとなるブドウたちにみんなで別れを告げています(笑)」(西口さん)

その後の調整は、香りや化学分析、実験データをもとに行っていきます。

「これは白に入れる酵母菌です」

発酵を終えたら、樽に入れて1年ほど熟成させます。

これが樽部屋。16℃に設定されています。

あれ? 後ろになんか見える

海の生き物! きのこも生えてる

「日除けのために窓に板をつけたんです。せっかくだから生徒達に自由に書いていいよと言ったら・・・思ったよりへただったんです(笑)(by先生)

ほのぼのしたところで、地下の貯蔵庫へ。県内の高校で地下室があるのはココだけ! という貴重なお部屋です。

どどーん

貯蔵庫も16℃。醸造年や種類ごとにワインの瓶がズラリ

ラベルやキャップシールは生徒がすべて手作業で貼り付けますよ

樽から出した赤ワインは、瓶詰めにしてさらに1年寝かせます。

そうして出来上がった頃には生徒たちがちょうど20歳を迎え、学校から、自分たちで仕込んだワインがプレゼントされるそうです。粋な計らい!

ワインは、毎年約6000本作られ、7月に行われる「桔梗祭」のみ販売されます。その味わいと貴重さから、毎年長蛇の列ができるそう! 3種の味わいはこんな感じ↓

赤:フレッシュで若々しい香り

白:やや甘口。ナイアガラ本来の芳醇な香り。

ロゼ:イチゴキャンディーを思わせるような甘い香りを残しつつコクもある。女子っぽい雰囲気のワイン

授業の一環とはいえ、ブドウ栽培から醸造まで生徒自らの手で行っている塩尻志学館高校。ワインを多角的に学べる上に、こんなに本格的なワインを作っているなんてビックリしました。

今年はコンコードのジュースを作る計画もあるそう。とっても楽しみです!

「俺、キミドリすぎない!?」(by先生)

 

そんな貴重なKIKYOワインが飲めるチャンス!

11月9日に目黒で開催される塩尻ワインイベント「SHIOJIRI GRAND WINE PARTY 2019」に、塩尻志学館高校も参加します。文化祭でしか購入できない生徒が醸造した貴重なKIKYOワインをはじめ、15ワイナリー約90種の塩尻ワインを一度に味わえるので、是非会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか?

「SHIOJIRI GRAND WINE PARTY 2019」公式サイト

 

塩尻志学館高校

住所/塩尻市広丘高出4-4

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