馬込沢の隠れた名店!渾然一体となった独創的な旨みの小宇宙「麺 田能久」
いきなりですが、イチバはアスリートです(念のため)。でも、何故だか世間では「ラーメン食べている人」と思われている・・自称日本一ラーメンを食べているアスリート(自分調べ)こと一場治之進です。
まさか自分がラーメンのライターをやるなんて数年前までは考えていませんでしたが、これも縁ですね。
ラーメン屋さん達も自分がラーメン屋をやるとは思っていなかった方も多いのではないかと思うイチバです。そんな難しいことを考えているうちに、お腹がへって来たので今日も元気にラーメン屋に行きます。
かつて鎌ヶ谷市に新星のように現れた名店・・今はどこにあるのかなぁ~と探しました。
場所
場所は東武アーバンパークライン「馬込沢駅」から県道59号線(通称:木下街道)を鎌ヶ谷方面に歩くと「新鮮市場」と言うスーパーが見えます。その敷地内の駐車場にあります。駅からは700m程の距離ですね。
駐車場はスーパーと共同なので、電車でも車でもアクセス良好です。
外観はスタイリッシュな雰囲気で、綺麗ですね。
店内・メニュー
店内は、落ち着いた「和」の雰囲気でカウンター6席・テーブル4席の計10席です。
メニューは「醤油・味噌・塩」の基本3味に加えて「つけ麺・坦々麺」があります。ちなみに、オープン当初は「醤油・味噌」だったそうです。
どれにしようか困り果てていると・・・「一番出るのは味噌だね」と店主の柳川さんは言います。それならばと「醤油・塩・つけ麺・坦々麺」に別れを告げながら「味噌ラーメン」をポチします。しかし、基本3味の中で「味噌」だけは価格を高く設定するお店が多い中で一律同料金とは・・・。
調理
店主の柳川さんにお願いして調理風景を見学させて頂きました。
味噌ラーメンと言えば「味噌ダレ」が最重要になりますが、こちらでは独特の製法で作っていると言います。
「よく味噌というと数種類をブレンドというのが決まり文句みたいになってるけど、うちは味噌は1種類だけしか使わない。味噌はブレンドしたから美味しくなる訳じゃないからね。旨みの出し方は別にあるんだよ。あとはスープとのバランスも重要だよね」
店内には香ばしい煙が漂い、イチバも興奮マッスル状態に突入!
「スープは試行錯誤しながら色々な料理方を調べてヒントにしていくうちに、今の作り方になったんだ。出汁はゲンコツメインで野菜は多め・・最後に昆布と鰹節。それを火を入れてから丸2日煮込むんだよ。要は熱と時間なんだ。」
・・・・丸2日!?
正直丸二日も煮込むとは驚きです・・・今までに取材した中でも最長時間です。
「煮込むと味が変化して、最後は”調和”するんだよ。でも長く煮込めばいいってもんじゃなくてね。強火・弱火のタイミングを細かく調整していかないと美味いスープにはならないんだ。」
最後に盛り付けを行います。水菜・味玉・チャーシュー・ネギに加えてパプリカパウダーやゴマも入ります。
実食
まずは、その独創的なビジュアルに驚かされます。このビジュアルは開店当初から大きく変わっていないですね。
スープは「味噌」と言いながら、かなり独創的で引きがあります。ベースは動物系の様でもあり、魚介系の様でもある。それでいて、所謂「豚骨魚介系」とは全く違う。一言でいえば香ばし芳醇味!!素材がどれとどれ・・と言うより、全てが渾然一体となり独創的な味に仕上がっています。加えて、背脂の甘みが効いていますね。
味噌ラーメンと言うと、味噌が主導権を握っている事が多い中で・・味噌も含めて一つの旨味に仕上がっています。
「このスープ完飲必至!」
甘味・旨味・香ばしさが渦の様に舞っていますね。ちなみに尖りや旨味過剰と言う物には無縁のスープで、この独自性は特筆レベルです。
麺は蒲田で創業が昭和24年の菅野製麺の多加水中縮れ麺です。
「菅野製麺はよく勉強しているからね。昔からここの麺を使っているんだ。」と柳川さん。確かにプリプリした食感が背脂が浮くスープを持ち上げて、しっかりと一体感を出しています。
具は味玉・モヤシ・バラチャーシュー・水菜・ネギがあり、上には赤いパプリカパウダーが降り掛けられています。まずは、極限までスープと一緒に柔らかく煮込まれた上に炙られた絶品のチャーシュー。箸で崩れる程に柔らかく、口に入れると香ばしさと肉の旨味が広がります。これは絶品ですね。
モヤシは熱々のラードがかけられていて、シャキシャキ感を残しながらも炒めに似た香ばしさを出しています。水菜も色合いだけでなく口の中に瑞々しさを与えてくれて、舌をリセットしてくれます。ゴマや背脂の存在が全体に立体的な旨味と香りを出しているのも好感です。
お店のこと
店主の柳川さんにお話を伺いました。
柳川さんは生まれも育ちも鎌ヶ谷市で、高校卒業後は服飾関係の専門学校に進学したそうです。その後はファッション業界に入りましたが、色々あって自営で商売を始めることになったそうです。
「自営で何か商売をしようと思って思いついたのがラーメン屋。サラリーマン時代はラーメンよく食べ歩いていたしね。」と、柳川さん。当時は背脂系の走りである「千駄ヶ谷ホープ軒(千駄ヶ谷)」などが好きだったとか。
ラーメン屋を開くに当たって修行などはされたのですか?と伺うと・・
「独学だよ。もともと料理は好きだったし、ヒントはラーメン屋に限らず色々な所から得たよ。和食やフランス料理・・・市場の仕入先で旨味の出し方聞いたり。」
そうして柳川さんは今から16~7年前に鎌ヶ谷市の「すばる書店」の近くで田能久をオープンしました。
実は、鎌ヶ谷で開店された時に若かりし頃のイチバは食べに行っているんです。
その時「ついに鎌ケ谷にもこんなにスタイリッシュなラーメン屋ができたか!かなり美味しいけど、完全にオリジナルだし・・どこで修行したんだろう」と思ったことは今でも覚えています。そう、店構えも・味も・・完全オリジナルだった記憶があります。
今でこそスタイリッシュな外観・炙りチャーシュー・尖りのない洗練されたスープなどは首都圏では見ますが、当時は首都圏・・特に鎌ヶ谷付近では見られない、5年以上先を走るお店でした。そこは元ファッション業界らしく、常に先を見る感性なのでしょうか。
「ラーメンというジャンルにはこだわらなかったからじゃないかな。魚介系のラーメン食べても出汁のエグ味が出ているのが嫌でね。和食を勉強して元の素材を生かすような出汁にしたんだ。だから、うちのスープは旨味の出し方を見て欲しいね。」
当時から完成度の高い独創的なラーメンを作り、ラーメンブロガーの間でも話題になり、その後は軌道に乗り、オープンから3年後に広い場所と駐車場を完備する為に「マルエツ馬込沢店」に移転しました。
「マルエツでは11年やってその後に、“ここでやらないか?”という話をもらって現在の場所に移転したんだよ。もう2年になるかな。」
イチバが凄いと思ったのは、移転を繰り返しながらもオープン時のラーメンを大きく変えずに磨き続けていた事。この16~7年と言うと、巷のラーメン屋のレベルが相当上がっている中でも洗練された味に感じるのは「どれだけ先を走っていたんだ?」と思わざるを得ません。
「でも、少しは変えてるよ。チャーシューの炙り方とか細かいところだけど。お客さんの舌が肥えても”10年ぶりに来たけど相変わらず美味いねぇ~”って言われたいしね。」という柳川さん。ちなみに後継者として、息子さんの奥さまが後を継ぐかもと話されていました。この独創的なラーメンがこの先も残って行く事にほっと胸をなでおろしたイチバでした。
最後に「田能久」の店名の由来を伺うと・・・
「加山雄三の”若大将シリーズ”に出てくる”すき焼き屋”の店名。あれからとったんだよ!」と、笑顔で話されました。
マッスルコメント
磨かれた感性に習って磨かれた筋肉×4!!!
麺 田能久
住所/船橋市馬込西1-5-25
TEL/非公開
営業時間/11:30~14:30 18:00~翌1:00
定休日/水曜・日曜
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