伝統と進化!船橋が誇る老舗製麺所「山田食品」~後編:試食と歴史~
自称日本一ラーメンを食べているアスリート(自分調べ)こと一場治之進です。
前編もこのキメ台詞を言いましたが、これをやらないと始まらないので後編も台詞をキメました!
*もし前編見てない方がいましたら「番外編レポ 前編」を見て下さい。
・・・・お腹も減ってきた所での麺の試食のお誘い。もちろんノリノリでついて行きます。ドアを1枚開け、テーブルが並んだ部屋に行きます。ここはスタッフが休憩する場所であり、試食をする場所でもあるそうです。その為調理器具や調味料・業務用スープ等が揃えてありました。
「じゃあ準備にちょっと時間かかるから、社長に会社の歴史などを聞いていてよ。」と笹川専務。
はやる気持ちを抑えて、応接室に戻ります。
山田食品の歴史
応接室に戻り山田社長に会社の歴史についてお伺いしました。
「昔のことは祖母から聞いた話になりますが、私の曾祖父の初代社長山田石松が91年前、つまり戦前にワンタンの皮を海神(船橋市)で作っていたのが始まりと聞いています。普通はうどん等から中華麺の製造に入る製麺所が多かった中で、うちは初めから中華麺の製造を行っていたそうです。しかも乾麺が主流だった当時から生麺の製造を行っていたのは珍しかったのだそうです。」
ちなみに創業者の山田石松氏は新潟出身であり、その影響か社内は大渕現会長を始めとして新潟出身の方が多いとか。そして海神の製麺所はと言うと・・・。
「その後、昭和38年に船橋駅の北口に工場を移転しました。」
場所は現在でいうと、船橋駅北口十字路の交差点、ロイヤルホストの向かいにあるニッポンレンタカーの場所にあったそうです。
昭和50年に生産量の拡大に伴い現在の場所に移転する事に。
そして平成22年に建物の老朽化に伴い、工場を建て直して現在に至ります。
「リニューアルして1年後に東日本大震災が起きたので、建て直していなかったらかなり被害が出ていたかもしれないですね。また旧工場ではサンプルでOKをもらっても、製造風景を見学に来て断られた事もありましたが、リニューアル後はそういったこともなくなりました。」
社屋の移転やリニューアルだけでなく、長い歴史の中で会社の舵取りである社長も次の世代へと移り変わってきました。
2代目は祖父の「山田喜平次」、3代目は母、4代目は大渕氏・そして現5代目に山田社長と引き継がれています。
「昔は麺の種類も数える程でしたが、今はラーメン業界も日々トレンドが変化しているので、お店の方が求める要望も複雑多様化しています。それらのニーズに応える事も大事ですし、会社としてのブランド力を上げていくことも大事です。香麺は山田食品として特徴ある麺を出そうという考えから生まれました。」
こうした新たな取り組みは、山田社長をはじめとした若い世代の人たちによって進められていくでしょう。麺喰人のイチバとしても今後がとても楽しみです!
と、ここでちょうど試食の準備が出来たそうなので先程の部屋に移動。
山田食品の長い歴史の中で生まれた「香麺」・・・・ここまでの過程を考えると試食とは言え緊張マッスルになります。
老舗が挑む挑戦「香麺」!
「香麺」「香つけ麺」は「全粒粉」入りと、無しの2種類がそれぞれあります。
今回、笹川常務が用意した麺は「香麺」「香つけ麺(全粒粉)」です。ちなみに他社の全粒粉入りの麺は全粒粉の含有量が2~3%に対して「香麺」の全粒粉入りは約5%と、しっかりと小麦の香りを感じたり麺に黒い点が見えるのが特徴だそうです。
厨房では調理師の経験がある笹川専務が慣れた手つきで麺を茹でます。今回は麺を味わうのでスープは業務用ですが、元々鶏白湯に合わせて作ったと言うだけあり、鶏白湯のスープが用意されています。
「このスープでブリックス10ぐらいかなぁ~」笹川専務が言います。「中々濃いですね」とイチバ。
やり取りにポカーンのイヨリ編集長「※ブリックスって何?」
説明しよう!「ブリックス濃度」とは溶液中の固形分濃度を表す目盛。「Bx」と書いたりする。単位は「%」か「度」である。「水」は0%・カレーで14~15%・ケチャップで約30%・普通の清湯ラーメンだと4~5%程。ラーメン用語としては細かい数字よりドロ系スープをすすりながら「このスープ、ブリックスやべぇ!!」と言う無理矢理な使い方をする事が多い。ちなみに埼玉県の某ラーメン店ではブリックス53%以上で箸が刺さると言うラーメンが存在する。ブリックス濃度以前に色々やばい。
と、言う訳で「香麺」にはややトロ系の鶏白湯スープが用意。
「香つけ麺(全粒粉入り)」にはやや魚介が効いたつけダレが用意されました。
試食① 香麺×鶏白湯
まず出来上がった試食は鶏白湯×香麺。
スープは業務用とは言いますが、かなりレベルが高く「業務用でこの味が出るのか」と驚きます。
麺は独特の口の中で反発する不思議な食感の「香麺」です。鶏白湯系に合わせた麺と言うだけあって、スープの持ち上げが良いだけでなくトロっとしたディープな口当たりの鶏白湯スープの中で存在感を発揮する食感です。確かに合います。お世辞抜きに鶏白湯スープとの相性は抜群です。
「香麺」の特徴と言えば、食感だけでなく麺の柔軟性です。「伸びている」訳ではないのですが、かなり柔らかい印象があります。それなのに口の中に入れた瞬間に反発が感じるので不思議な感覚です。正直、ビックリしました。
この柔軟な食感が後半までヘタらずに維持しているのも大きな特徴と言えます。
試食② 香つけ麺(全粒粉入り)×魚介系
こうなると「香つけ麺(全粒粉入り)」への期待はクライマッスル(最高潮)になります。「香麺」より太い麺で全粒粉の香りと強い反発のある食感ならば、つけ麺の麺としては申し分ないと思います。
そんな妄想をしていると、つけ麺が着丼しました。
麺は「全粒粉」入りらしく黒みがかった色でウェーブがある太麺です。
つけ汁は業務用の魚介系で、ブリックス濃度は低めの甘味・酸味は弱めで塩分が立った方向です。
「この麺すごい美味い!」と、イチバの前にイヨリ編集長が声を出しました。
昨今のつけ麺の人気の麺はムギュムギュした筋肉質な食感が多く見られるのですが、「香つけ麺(全粒粉入り)」は柔軟な粉の抵抗が詰まっていると言う「コシ」であって「コシ」でない様な独特な食感です。前述した人気がある麺は力技であるのに対して、この麺はツル・ムギュ・プチと言う3段階の技を感じる食感が口の中に広がります。また、麺自体に独特な野生味ある香りが残っているので上質な蕎麦にも似た錯覚を覚えます。
ここまで書くと、かなり主張の強い麺と思う方もいるかもしれません。
実は、ラーメンの場合はスープが主役。つけ麺の場合は麺が主役になるので、強い特徴のある「香つけ麺」は主役を張れる存在感を発揮します。
これからのラーメンの流行は??
極上の麺2杯分の試食を終えて・・・・
「これからどんなラーメンが流行ると思う?」不意に質問されましたが、イチバの8bitのコンピューターに今食べた極上麺の糖質が脳にエネルギーを供給し・・・・。
「清湯の手打ち麺ですね!」と、答えました。もちろん、保障は出来ませんが。
今は空前の清湯系ブームです。首都圏の新しい人気店の多くは清湯系で中細ストレート麺のパターンです。かつて「豚骨魚介系」が増えていた頃、あるラーメン評論家が「*またお前か系」と名づけていました。今は清湯系が「またお前か系」であると言えます。言い換えると定着した感じはあります。
説明しよう!!「またお前か系」とは、広島出身のラーメン評論家の北島秀一氏が一時期「濃厚豚骨魚介系」が大ブームになり、食べ歩く中で新店の大半が「濃厚豚骨魚介系」を前面に出すお店だった為に「またお前か系」と名づけた。当時、食べ歩いているラーメンマニアはその言葉で味が想像出来る程に濃厚豚骨魚介系の新店は社会現象だったのだ。イチバの中ではヒットな言葉で、しばしば使わせて頂いている。対義語:ニューウェーブ・・・現在あるスタイルのラーメンから真っ向から挑むオリジナル系ラーメン。受け入れられるかは未知数だが、当たればそのスタイルの元祖として君臨する場合がある。
その中でも、清湯系のスープはそのままに、麺を手打ちや手打ち風で合わせるお店が増えつつあるのが昨今目立つので今後も増えてくるのではないかと予想しました。
それにしても常に次のブームにアンテナを張る姿は「さすがプロ」だなあとつくづく思いました。
最後に、「山田食品」では一般消費者向けの麺の販売も行っているそうです。気になる方は一度買いに行ってみてはいかがでしょう。年末は蕎麦の販売で混雑するそうです。ここの蕎麦を食べながらの年越しは贅沢ですね(今年、買いに来ようかな)
前後編の長編レポとなった今回いかがだったでしょうか?
ここまで読んでくれた読者の皆様、また山田社長、笹川専務をはじめ、工場スタッフの皆様も取材のお時間いただきありがとうございました!
マッスルコメント
千葉県屈指の老舗製麺所の製麺を見学して・・・口の中に広がる無重力の食感「香麺」を試食して・・・・・無重力マッスル!!!!!!
山田食品 株式会社
住所/船橋市習志野4-10-3
TEL/047-477-4171
営業時間/9:00~17:00
定休日/木曜・日曜・年末年始
※一般の麺の販売は営業時間内
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