背脂系のサラブレッドが挑んだ”山” 「ラーメン すけがわ」
男なら越えなければならない山がある・・・・
自称日本一ラーメンを食べているアスリート(自分調べ)こと一場治之進です。今回からファッションを変えてオリジナルTシャツを着てレポする事になりました!密かに流行らせようと思う今日この頃。
兎にも角にもオリジナルグッズが出るまでになったのは読んで頂いている皆様のおかげです
これからもイチバ的な視点でお店の魅力とディープで奇妙な世界を皆さんに伝えていきたいと思います。
さて、今回のテーマは・・・「何故山に登るのか?そこに山があるからだ」と、イギリスの伝説的登山家は言った様な言わない様な。今回はそんな「山」に挑む男たちのドラマです。
というわけで第11回は津田沼の「すけがわ」に取材に行ってきました。
場所
最寄り駅はJR津田沼駅と新京成電鉄の新津田沼駅の中間になります。両方の駅から100~200m程の距離です。
県道69号線で京成大久保方面に車で走ると黄色いお店のロゴが見えます。目立つので気になった方も多いのではないでしょうか。
2018年5月16日オープンと、まだ新しいお店なので緊張して、とりあえず※シャッターポールで並びます(写真上)
説明しよう!「シャッター」とはお店が開店する前に「今か今か」とわくわくしながらお店の前の列に並んで待つ事である。ちなみに先頭の場合は「ポール」(F1のポールポジションにちなんでいる)と呼ぶのだ。「シャッターポール」とは、開店前1番乗りと言う事になる。後ろに並びが出来ると後方から尊敬の眼差しを感じる事があるが、その場合の大半は浮かれている故の錯覚である。「シャッターポールかました」「あのお店並ぶからシャッター狙うか」と言う使い方が正しい使い方だ。
外観はお店のラーメンスタイルを現す黄色×黒で梵字(インドで使用されるブラーフミー系文字の漢訳名)のロゴが目立ちます。「和」テイストな建物で後ほど聞くと、もともとはお寿司屋さんだったそうです。
実はこの黄×黒の色使いで、食べる前からこちらのラーメンスタイルが分かってしまう私(ドヤ顔)。
店内
清潔感のある綺麗な店内はL字型カウンターのみ10席と言うレイアウトです。
まず目についたのは入口右側に置いてあるベビー用のテーブルチェアーです。カウンターのみで大人の雰囲気かと思いきや、小さなお子さんも歓迎と言う優しい店主。これは子供連れのお父さんお母さんにはとても嬉しいサービスですね。
店主の皆川さん曰く「小さな子供がいるとカウンターのみのラーメン屋は敬遠されがちなので。心ばかりのサービスです」と語る。
カウンターには卓上調味料とあの系統で御馴染みの貼紙があります。ヒントはニンニク・・・・そう、※G系です。
説明しよう!「G系」とは一言で言うと「ガッツリ系」。首都圏を中心に熱心な信者を持つ「ラーメン二郎」を元祖として、その直系とそれを模したお店を言う。大量の太麺・モヤシの山と「ニンニク入れますか?」と言う合言葉、それにチャーシューを「ブタ」・モヤシを「ヤサイ」と言う表現のお店を広義的にG系と呼ぶ。元祖である二郎の影響でG系のお店は黄色×黒の看板が多い。本家の二郎はG系の中でも特異かつ別格の扱いであり、客の層も「ジロリアン」と呼ばれるディープな方々。ちなみに「二郎 三田本店」は「聖地」と呼ばれており、「二郎 三田本店」に行く事をジロリアンの中では「聖地巡礼」と呼ぶ。とにかく書き出したら止まらないシュールで濃い世界が「二郎」。それを模した物を含めたのがG系。
意外かもしれませんが、イチバの胃は決して大きいわけではないのでG系と聞くと「今日はG系を食べるぞぉ~」と、胃と心が身構えてしまいます。
メニューとコール
お腹も空いたので入口の券売機に行き、メニューを見る事に。
こうなると券売機「左上の法則」(レポ2泰山参照)で「しょうゆラーメン」かなぁ~と思ったら、店主の皆川さんから「みそラーメン」がオススメと聞いて、そちらをポチ。まだ「みそラーメン」のボタンが登録されていないので、「しょうゆラーメン」の券に¥100-を追加して口頭で注文。
G系では二郎を初めとしてほとんどがラーメンの出来上がりの直前に※コールをします。実は、このコールこそG系の大きな特徴なのですが・・・これがG系初心者のハードルを上げています。「すけがわ」では食券を渡すと同時に野菜・ニンニク・しょうが・アブラ(背脂)の有無・又は量を言うだけなので初めての人でもすんなり注文出来ます。
説明しよう!「コール」とは「二郎用語」の一つでG系も含めて「お好み」を言う「儀式」なのだ。通常、G系はラーメンが到着する寸前に「ニンニク入れますか?」または「○○のお客さんニンニクは?」と聞かれるのでヤサイ(モヤシ)・ニンニク・アブラ(背脂)・カラメ(カエシ)の量や有無をリズム良く申告する。入れる場合は項目(ヤサイなど)を言い、多めは「マシ」・さらに多くは「マシマシ」(マシマシはやっていない店舗あり)さらに多くは「チョモランマ」(3倍と言われるがやってない店舗多数)と言う。例を挙げると。「ニンニク入れますか?」→「ヤサイマシニンニクアブラマシマシカラメ」(訳:ヤサイ多く・ニンニク入れて脂2倍・カエシ強め)。ちなみにコールに対しての客の返答を「呪文」と呼ぶ。二郎では自分の番を待つ人は緊張しているせいか目つき鋭くカウンター肘をついて手を組んでいる人が多い。「呪文」をタイミング良く噛まずに言えた人は何故かドヤ顔になる。「ニンニク入れますか」→「はい少し入れて下さい」と言う普通の返答をすると塩っぱい目で見られるので注意。
ちなみに個人的な見解ですが、G系は少しでも「ニンニク」は入れた方が美味しく頂けます。今回は「ニンニク」のみ少しで以外は「全マシ」にしました。
G系風に言うと「ヤサイマシニンニクスコシショウガマシアブラマシ」です。こうしてカタカナで書いてみるとまさに呪文です(笑)
もちろん「すけがわ」では「ニンニク少しで後は全マシでお願いします~」と普通に注文して大丈夫なので呪文を唱える必要はありません。
ちなみにヤサイを「マシ」にする場合は残さず食べるのがルールです。G系・・特に二郎では「残す」事を※ギルティ(禁止行為)と呼びます。
説明しよう!「ギルティ」とは二郎用語で「禁止行為又は作法」だ!店特有のローカルルールもあるが、やはり1番は「マシ」を言って残す事(マシコール撃沈)。他にも店によってフライングコールやロット乱し・高額両替などが言われる。G系では初めての店では「マシ」「マシマシ」は控えよう。イチバも何度撃沈しそうになった事か・・・。そんな緊張感もG系の魅力なのだ。
今回は初のG系のレポなので「イチバのRMYK」に熱が入っていますが、「すけがわ」はこういう二郎系の予備知識がなくても全然問題ないお店です(念の為)。
調理
と、言う訳でオススメの「みそラーメン」をいただく事になりました。調理工程を少し見せて頂く事に。
スープと味噌ダレは修行先の作り方をベースにしていて、豚骨・野菜・背脂で出汁をとっているそうです。見た目、かなり濃厚そうです。
ヤサイ(モヤシ・キャベツ)もしっかりと温められています。
麺は「てぼ」(レポ5ハマモト参照)で茹で上げ、ヤサイ・ニンニク・刻みショウガを乗せます。
この時点で「山」が出来上がります。調理を見ていると、「この山を制覇出来るか」不安になります。
チャーシューは出す直前に切ります。出す直前に切ると、酸化を遅らせ獣臭さが出づらくなるので美味しく頂けます。
そして・・「山」が完成します。
イチバが美味しい井戸水(検査済)をセルフで持って来た頃にラーメンが到着しました。
これがG系だ!
まずはG系を目で見て頂ければと思います。
まさに背脂LOVE・二郎LOVEを感じる美しいビジュアルですね。芸術です。
はっきり言って、モヤシの盛りがガチャピンのお友達のムックに見えます。その下には背脂の海が。
カメラを覗くイヨリ編集長から「これ食べきれるんですか?」と心配されますが、「山に登る前から負けること考えるバカがいるかこの野郎!」とアゴを突き出し気味にイチバは臨戦態勢に入ります。
G系・実食
G系の食べ方は大きく分けて3通りあります。
初級・・・・上のヤサイからモシャモシャ食べる。これは後半に麺が残るのでオススメしません。
中級・・・・ヤサイの山にトンネルを掘りながら穴をあけて、麺をサルベージ(レポ8美松参照)して、バランス良く食べる。減ってきたら麺とスープとヤサイを混ぜる。
上級・・・・秘技!※天地返しを行い、瞬時にヤサイにスープを吸わせる。
説明しよう!「天地返し」とは箸を差込み、瞬時に底の麺とヤサイの山を180度回転させる必殺技だ!汁を吸った麺が上になるので食べやすい反面、かなりの熟練者でも成功率が低いG系における高度な必殺技、例えるならフィギアスケートの「トリプルアクセル」に似ている。この技が成功した瞬間、カウンター並びの客の視線を熱く感じる。失敗して汁が飛び散ると違う意味で並びの客の視線が熱く重く感じる。本番前にしっかり練習する必要がある技。
個人的には中級者の食べ方をオススメします。今回イチバもそうしました。
スープは動物系の厚みのある旨味と上質な背脂の甘味がしっかりとマッチしていて、数あるG系の中でも相当ハイレベルな印象です。実際、G系のお店は塩分や化学調味料の旨味が過剰であるお店が多い中で、尖りが少なくハイレベルな背脂系ラーメンとしても通用する出来です。後半は味噌の甘味がジワリジワリ効いてくることで、飽きずに食べれます。
麺は二郎系では一般的に※オーションが効いた極太麺を使用します。すけがわでは「菅野製麺所」の極太特注麺を使用しています。「うどん」の様な麺は、モチゴワな食感で、最後まで伸びません。ワシワシと食べるこの麺はG系では定番であり、この系統の中毒性を出す要素の一つです。もちろん麺の質はかなり良いですね。背脂スープも麺も力強く、しっかりと合っています。
説明しよう!(今回はしつこいな)「オーション」とは精製度の低い「強力粉」の事だ。たんぱく質の含有量が多いオーションを使った低加水麺を使うG系の麺はコシ・歯ごたえ・小麦の香りが強いのだ。G系マニアは「この麺、オーションやばいな(この麺、旨いな)」などと言う使い方をする。オーション麺に魅了された人達が今日も鼻息荒くG系のお店に足を運ぶ。
具はややクタ系(シャキ系とクタ系がある)のモヤシ・キャベツでスープをしっかりと吸います。チャーシュー(G系ではブタと呼ぶ事が多い)はバラロールの厚切りで、プリプリした食感が極上ですね!
G系としては、かなり食べやすく「味」にこだわった1杯です。量を抜きにして、味だけで相当レベルが高いと感じました。
お店のこと
腹パンと満足感で若干眠くなってきたイチバですが、店主の皆川さんにお話を伺いました。
皆川さんは船橋市出身で、大学時代は不動産の勉強をしながら千葉県内にある背脂系の有名店でアルバイトとして働いていました。「その頃からラーメンを作るのが好きになりました。性に合っているというかやっていて本当に楽しかったんですよ」と言われます。
その後、当時一緒に働いていた方が独立する際に誘われてお店を手伝う事になりました。そのお店は亀戸・秋葉原・新小岩で絶大な人気を誇る背脂系「ごっつ」。イチバも3店舗で食べましたが、かなり極上な背脂系です。この系統は背脂系でありながら「しょうゆ」だけでなく「みそ」の評判も良い事で知られています。
そりゃあ背脂が美味いはずだよなぁ~と一人納得するイチバ。
皆川さんはごっつ3店舗それぞれで働いてきました。かれこれ10年以上背脂系のラーメンに携わってきた生粋の背脂系サラブレッドとも言えます。
やがて自分のお店を出そうと物件を探していたところこの場所が見つかりオープンに至ります。
店名「すけがわ」の由来は覚えやすいひらがなの名前を考えていたところ、知り合いにすけがわさんという方がいて、自身の名前にも少しかかっていて“響き”がとてもしっくりきたので使わせてもらったのだそうです。
「当初は背脂系をそのまま出そうかとも思ったのですが、津田沼は学生もサラリーマンも多いので、この辺にはあまりないG系で勝負しようと思いこのスタイルのラーメンにしました。私自身も子育て中なのでお子様連れのファミリーにも来て欲しいですね。」と語る皆川さん。
しっかりと背脂系の技術が生きた良い所どりのオリジナルG系だと思います。
店主皆川さんの優しい雰囲気も相まって、心温まる新しいG系に満足度マシマシです!
マッスルコメント
優しいG系で・・・マッスルマシマシマシ!!!(※マッスル3倍)
(※友情出演 マッスルラーメンブラザーズ 猪瀬兄弟:白井市在住)
右 兄は中央学院大学陸上部
左 弟は柔道高校総体 千葉県3位 二人はレポ1 月見軒のお祭り出店で7時間420杯売った猛者。
ラーメン すけがわ
住所/船橋市前原東1-9-1
TEL/047-411-5355
営業時間/11:30頃~14:30 17:30頃~21:30(金曜日は~22:30)
定休日/月曜
備考/駐輪場あり(自転車、バイク)
↓地図はこちら
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