歴史を見た鉄鍋は語る!中山競馬場すぐ「北方十字路」の老舗「鉄鍋らぁめん 権左衛門」
「鎌ヶ谷・船橋あたり」の読者の皆さんこんにちは。自称日本一ラーメンを食べているアスリート(自分調べ)こと一場治之進です。
突然ですがここでマッスルクイズ?です。
正解は「ほっぽうじゅうじろ」です!決して「きたかたじゅうじろ」ではありませんよ〜
「ぼっけじゅうじろですよイチバさん・・・」
と冷静なツッコミを編集長から入れられるまで本気で「ほっぽうじゅうじろ」だと思っていた一場治之進です。
良く見ると信号の横にアルファベット表記がありますね。こちら中山競馬場近くの大きな十字路ですが、競馬に興味なくても通ったことのある方は多いかと思います。
そんな「北方十字路」で一際オーラを放つ「鉄鍋らぁめん 権左衛門」を今回はレポします。
場所
「権左衛門」の最寄り駅はJR武蔵野線「船橋法典駅」です。駅前を通る県道59号線(通称:木下街道)を駅を出て右方面に約800m程進むと「北方十字路」があります。その「北方十字路」を船橋法典駅方面から来て右折すると「権左衛門」があります。駅からはやや歩きますが、徒歩圏内ではあります。
このお店・・・イチバの勘では只者じゃありませんね。匂いますよ店主の歴史とドラマと味噌の香りが・・・・。
店名の前に「鉄鍋らぁめん」と言う何とも食欲をそそるサブタイトルがあるじゃありませんか・・。駅から約800mダッシュしてSpO2(酸素飽和度)が80%弱にも関わらずテンションはマッスルに突入しました。
店内とメニュー
店内はノスタルジックな昭和の雰囲気で、落ち着いた「和」一色です。最近では珍しい座敷4席×2・ボックスシートのテーブル8席・カウンター12席と、かなり広いですね。
メニューはかなり多く、迷いますが・・・やはり店名にも入っている「鉄鍋ラーメン」を注文する事にしました。この「鉄鍋」・・・使っているお店は中々見ませんので、どんなラーメンが出てくるのか、イチバの腹直筋と大円筋は期待と興奮でパンプしまくりですね。
他のメニューを見ると「札幌」がつく物や「ちゃんぽん」など、昭和のお店に多いお客さんのニーズに広く応えるお店みたいですね。店主の木村さんも、かなりの熟練された職人のオーラがあります。
調理
店主の木村さんにお願いして、調理風景を見学させて頂きました。
店の古さとのギャップすら感じる綺麗で広いオープンな厨房の中には木村さんと奥さんが動きます。
木村さんは重そうな中華鍋でスープと一緒に野菜を炒めます。どこか札幌ラーメン(※レポ17パンケ参照)の手法に似ていますね。
鉄鍋の丼は直接火にかける訳ではありませんが、十分に温めます。
スープに使う胡麻ペーストは完全自家製で、置いておくと成分が沈殿して分離するので、使う前によくかき回すそうです。
その中にスープ・味噌ダレなどを入れて奥さんが手でミキサーします。
更に麺の茹で加減はタイマーなどを使わずに奥さんの感覚で上げます。そこで驚いたのは奥さんの平ザルの湯切り技術です。腰が入ったテンポの良いアクション…これはかなりの熟練度です。編集長もその技術の高さに気づいたのか、「あの平ザルの技術すごいですね・・・」と感嘆の声を上げます。
その後、辛味噌やコーン・山菜などを盛り付けて完成です。夫婦の連携はまさに阿吽の呼吸!一連の流れに全く無駄な動きがありません。
取っ手を持ちながら運ばれるラーメンは単なるラーメンと言うより郷土の鍋料理の様にも見えました。
実食
鉄鍋を持つと、陶器の丼とは全然違う重量感を感じます。味噌の素朴な香りが食欲をそそりますね~。
スープの一口目は胡麻×味噌の甘香ばしい香りと旨味が強く感じます。これは日本人としてのDNAが騒ぎますね。スープのベースがしっかりしているので、平べったくならずに厚みのある旨味です。味噌と胡麻の和風ポタージュなスープは、レンゲが止まりませんね。派手さはありませんが、引力があります。
丼の中央の辛味噌を溶かすと、スープ全体が一気に赤く変わります。そして・・・・・。
「辛っ!!」これは・・・旨い坦々麺に変化しました!!!これはギミックですね。嬉しい不意打ちです。単なる味変と言うより、完全に別物のスープに変化しました。この辛さから、体がポカポカしてきました。和風から瞬時に中華に変化するその仕掛けは面白いですね。しかも、スープのベースがしっかりしているので辛いだけで安っぽくならずに完成度の高い変化になっています。
麺は山田食品の中ストレートで、やや柔らかめに茹でています。老舗のお店は柔らかめに茹でる傾向にあります。昨今では麺固めが主流になりつつありますが、麺はやや茹で時間が長いほうが麺自体の旨味が増えたりスープへの馴染みも良くなります。特に、胡麻×味噌の厚みあるスープに対しては麺がしっかりとスープに馴染んでいる事で、後半まで飽きずに食べる事が出来ます。
それにしても、船橋近郊での山田食品の利用率は高いですね。木村さんは「うちは初めから山田食品だったよ。言えばすぐ来てくれるし、色々と話を聞いてくれるからね・・・。」以前のレポ(レポ番外編:山田食品)を思い出して、何故かイチバも嬉しくなりました。
具はコーン・モヤシ・玉葱・若布・メンマ・肩ロースチャーシュー・そして山菜が入ります。肩ロースのチャーシューは厚めで、しっかりした食感ですね。特に山菜は鉄鍋のイメージにピシャリですね。
「和」のテイストの胡麻×味噌の素朴かつ濃厚な味噌ラーメンから、しっかりとしたベースの坦々麺に変化する1杯に、箸とレンゲが止まりません。
気づけば完食です・・・・。辛味の余韻で体の中からポカポカします。
かなりの経験値を感じる1杯。これは木村さんに話を聞くしかありませんね。
お店のこと
店主の木村さんにお話をお伺いしました。
木村さんは船橋市出身で現在66歳、奥さんは大多喜の出身だそうです。
20歳の頃から飲食業の道に進んだと言う木村さん。そのきっかけとは??
「オイルショックで勤めていた会社が傾いてね。それで、脱サラして何かやろうと考えている時に、知り合いのラーメン屋に誘われたのがきっかけだね。初めは知り合いの麻婆ラーメンのお店に2年・次に船橋の山海ラーメン(海神)に2~3年・・・次に金杉(船橋市)のお店、白井の定食屋、それに鎌ヶ谷の知り合いのお店を手伝ったんだ。」
そして、この場所「北方十字路」に念願の独立オープンしたのが昭和59年と言うのですから、かれこれ創業35年にもなる老舗ですね。
「最初の10年間は忙しくてねえ、最低でも1日130人くらいは来たかな・・日曜日は7人でやってたぐらいだったんだ。多い日で1日240人。当時はこの辺もまだ飲食店が何もなかったから、競馬場のお客さんよりも地元の人の方が多かったよね。」
オープンして10年は嬉しい悲鳴のもと、お店を回していたそうです。この間に奥さんとの出会いがあったそうですね。仕込みは「作れるものは自分で作る」事を信条にしているので、大変だったそうです。
何で鉄鍋??
鉄鍋は開店当初からあったのでしょうか??
「開店する時に普通のラーメンじゃつまらない。何か目玉が無きゃ駄目だと思って、白井のお店で教わった坦々麺を分なりにアレンジして出すことにしたんだ。そんな時に知り合いの食器屋が“鉄鍋は割れなくて良いよ”って勧めてくれてね。鉄鍋のラーメンなんて珍しいからこれで売っていこうと思ってね。」
と、簡単に話されていますが・・食べた「鉄鍋ラーメン」はまさにオンリーワンの味。かなりの時間、試行錯誤されたのではないでしょうか。
結果鉄鍋ラーメンはそのビジュアルはもとより味も評判となり、今でも人気No,1のメニューなのだそうです。
やらなきゃ仕方ないだろ
今から約5年前・・・木村さんは61歳の時に脳梗塞で倒れました。一命を取り留めましたが、左片麻痺になり車椅子生活になりました。
「一人でコップも持てないんだよ・・手が震えて。もちろん店にも立てない・・だから店を休んだよ。(体が)動かなきゃ辞める他ないだろ。左(半身)全部駄目になって、車椅子生活になると思われていたみたいだけど・・」
お店どころか、木村さんは脳梗塞によって普段の生活も奪われてしまったそうです。そして、木村さんがまず考えた事にイチバは驚きました。
「理学療法士に中華鍋を見せて”こいつ振れる様にしてくれ”って頼んだんだ。」
「脳梗塞の左片麻痺ですよね??」イチバは驚いて聞き返しました。
「だって、やらなきゃ仕方ないだろ。店を再開するのを待ってる常連もいるし、リハビリの平行棒で3歩歩けた瞬間に”いける”って思ったね。たまたま担当の理学療法士の人がスパルタで、毎日歩く距離を増やすんだよ(笑)負けたくないって思ったね。それに周囲でリハビリしている人達にも負けたくないって思ったんだ。気づいたらリハビリで2km歩いていたよ(笑)」
木村さんのメンタル凄すぎ・・・
2kmは最早リハビリでなくフィットネスです。
復帰そして再開
地獄の様なリハビリを乗り越えて、日常生活動作を取り戻した木村さん・・・そして
「俺は頑張ったというよりも、やらなきゃ仕方ないって思っただけ。歩けるようになって、階段も昇れ流ようになって、退院して半年経ってから家族に俺が作った物を食べてもらって店を再開できるか判断してもらったんだ」
家族から出た結果はGOサインだった
そしてお店を再開。再開店当日には木村さんを待っていた常連客が皆さん来てくれたそうです。その常連客は今でも週に2~3回は来ると言います。
「常連のお客さんがいなけりゃとっくに辞めていたと思うよ。でも待っててくれる人がいるっていうのは励みになったよね。とはいえ以前と同じようには動けないから、餃子だって1日100個ぐらいしか作れないし、今は昼営業しか出来ない。これもリハビリの延長だと思って頑張っているんだ。」
昔、九州の会社にいたイチバはある言葉を思い出しました。鹿児島の言葉で「ぼっけもん」。関東では「乱暴者」などの意味と思われていますが、鹿児島では「質実剛健で勇気のある人」と言う意味で使われます。
まさに木村さんは北方十字路のぼっけもんと言えるような豪快な人でした。
店名の由来
最後に「店名の由来」についてお伺いしました。
「権左衛門は屋号なんだよ。店名で悩んでいる時に誰かが”屋号でつけたらいいんじゃないか”って言ってね。出身は前貝塚なんだけど昔は村長をやっていた家らしくて。その権左衛門さんから取ったんだよ。5人兄弟一番下なのに屋号取りやがってと兄貴には言われるけどね(笑)」
鉄鍋らぁめん 権左衛門
住所/市川市北方町4-1863-2
TEL047-338-9998
営業時間/11:00~15:00(早仕舞いあり)
定休日/不定休(盆・正月は休み)
↓地図はこちら
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